漆のような光沢と深みのある黒色を漆黒という。金属加工のアベル(大阪府八尾市)は、ステンレスの表面を漆黒に変えることに成功した。「レクサス」の窓枠など、高級素材として用途を広げている。秘密は、塗装でもメッキでもない独自の発色技術にあった。社長の居相(いあい)浩介さんは、原理をこう説明する。「自然な状態のステンレスは、含有成分のクロムが空気中の酸素と反応することで、厚さ3〜5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの酸化皮膜ができています。さびにくいのはそのためですが、我々は電気と薬品の酸化力によって、皮膜を人為的に成長させています」。価格は通常のステンレスの2倍を超えるが、用途は着実に広がっている。建材では、東京スカイツリーのエレベーターの内壁が代表例。反射しにくさと皮膜の薄さが評価され、カメラの光量を調節する羽根にも使われている。
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